第14回:足の健康を考えた靴の選び方
整形外科医として足を診はじめて半世紀以上が経ちました。「どんな足でも、あるだけ良い」と思うこともあれば、「こんなに痛がるなら、足なんてない方が良いのでは」と思うこともありました。足の健康とは何でしょうか。
足にとって最も大切なことは痛まないこと。秘訣は「鍛えて」「護る」
長時間立てて、長距離歩け、速く走れて、歳をとっても足が使えれば言うことはありません。これらを実現する為には足を「鍛える」かつ「護る」事が足の健康の秘訣です。
しかし、両者は時として相反するのですから、「鍛える」か「護る」かに応じて最適な靴選びも変えないと、かえって逆効果になりかねません。靴選びを間違えると、鍛えようとしてかえって足を傷つけたり、護ろうとするばかりにひ弱な足を作ったりすることになりますので、要注意です。
足の健康の為の靴選び
では、足の健康のために、具体的にはどんな靴を選んだらよいのでしょう?
それはまずは履いて「痛くない」ことが大事です。シューフィッターに足長と足囲を正確に測ってもらい、きつ過ぎないサイズを選びます。その上で若い人が足を鍛えるのなら、踵や前足部の脂肪組織とアーチを鍛え、踏み返しを訓練しましょう。薄く曲がり易いフラットな靴底で、アーチサポートやクッション性はいりません。要はアスファルト・ジャングルの中で、裸足に近い靴生活を送るイメージです。しかし、足は疲労骨折の最も多い部位でもあるので、無理のしすぎは禁物ですよ。
その1:40歳過ぎで足を鍛えるなら
40歳過ぎになって足を鍛えたいと思ったら、パンプスや紳士靴の「底が厚め」の物を選びましょう。そろそろ体の補償期間が切れかかる歳なので、色々な足の病気に注意しなければなりません。MTP関節や足関節は厚めの曲がりにくい靴で護りに入り、ロッカーボトムやヒールで足の踏み返しを助けながら、一日の歩数を確保して、足と脚の筋力を強化してください。筋力を強化すれば、関節軟骨や靱帯の老化を防止できます。
その2:60歳過ぎで足を鍛えるなら
60歳過ぎて足を鍛えたいと思ったら、軽くて、クッション性とアーチサポートのあるインソールの着いた靴を選びましょう。大切なのは転んで骨折しないことです。気がついた時には、足先を引っかけてつまずき転ぶ年になっています。足だけでなく体全体の補償が切れてきますから、心臓と肺、足腰の筋力とコントロールする神経を維持しなければなりません。頭で考えるほど、神経は働かず、神経が命じるほど筋力は出ないので、転びやすくなります。バランス良くこれらを鍛えるためには、軽く、歩きやすい靴で、小股でゆっくり長く歩くことです。
健康に役立つ靴に出会うために
残念ながら、この靴を履きさえすれば健康になると言う靴はありません。人生の時期に合わせ、自分の健康と幸福についてしっかりと考え、自分の求める物を自分自身で決めて下さい。足に関心を持ち、人生の目的をしっかり決めれば、健康に役立つ靴が必ず見つかります。