第9回:大人の足の障害
人間は、常時直立二足歩行をする動物です。
私たちの足は、大地との唯一の接点として600万年もの長い時間をかけて掛けて進化し、優れた運動機能を獲得してきました。ですが近年の高齢化に伴って、まるで神様の補償期間が切れたとしか言いようのない疾患が増えてきました。
今回のコラムでは、そうした現代社会における中高年の足の障害についてご紹介します。
アキレス腱が痛いと危ない?
アキレス腱は人が歩く上でとても重要な役割を持っていて、人が「歩く」ときに、アキレス腱はかかと周辺の骨に付着し、足の関節や、足指の付け根の関節を支点として、体を持ち上げるという欠かせない組織です。
アキレス腱は太く、とても丈夫な腱ですが、こういったはたらきを1日1万回行うと、30年でなんと1億回も(!)繰り返す計算です。すると、いかに太くて丈夫なアキレス腱でも、傷つき、炎症を起こしてしまいます。これが「アキレス腱炎」や「アキレス腱周囲炎」という疾患です。
特にサイズがキツイ靴を履いていたりすると要注意です。
アキレス腱が靴と足の骨に挟まれることで圧迫されてしまい、炎症が起こりやすくなってします。アキレス腱はもともと、血行に乏しい組織なので、とても丈夫な反面、一度傷ついてしまうと修復力は決して高くはありません。
中年以降、痛みを無視して運動を続けると、アキレス腱断裂の危険が…。
痛みが出たら運動量を減らすと同時に、踵で腱を圧迫しない形状のシューズを選ぶようにしましょう。
朝一番にかかとが痛い?もしかすると病気かも…
人の足はたった2本で大地に密着できる柔軟性と、体重を支えて持ち上げる剛性を兼ね備え、さらにこれを交互に素早く繰り返すことが出来るとても素晴らしい機構です。
これらを可能としているのは足の「アーチ」の部分。弦を張った弓のように、弦を引き絞れば強い剛体となり、緩めれば柔軟性を持ちます。
ですが、いかに優れた機構とは言え、やはり足のアーチも一億回以上も繰り返し使うと、少しずつ弱ってしまいます。すると、弦にあたる「足底筋(腱)膜」や、足底筋と踵の付着部に小さな断裂が生じてしまいます。
こうした断裂が、中年期に起こりやすい「踵骨棘」や「足底筋(腱)膜炎」という、朝一番にかかとが痛む疾患の原因です。
老後までの長期間の酷使に耐える様に、子供の内に足を鍛える事も重要ですが、メタボばかり気にして足の耐用期間を早期に使い切ってしまうのは良くありませんよね。
次回のコラムでは引き続き大人の足の障害と、その対策をご紹介します。