第12回:あなたは読める?「肉刺」「胼胝」「鶏眼」その2
今回のコラムでは前回ご紹介しきれなかった肉刺(マメ)の他にも、黒爪や水虫など「足の皮膚」に出来る代表的な障害をご紹介します。こういった障害が起こらないよう、日頃から予防につとめていきましょう。
肉刺(まめ)とは?
前回ご紹介した「タコ」と「うおのめ」は、足への強い圧力が原因となって、硬い角質が増殖してしまうものでした。これに対して肉刺(まめ)や靴ずれは、圧力ではなく足と靴の「摩擦」が原因で生じる水泡です。摩擦で生じる力によって、足の皮膚と皮膚(表皮と真皮)の間が剥離してしまい、その間に体液が溜った水疱が「肉刺(まめ)」です。
まめの表皮が破れて真皮が露出してしまうととても痛いだけでなく、炎症を起こして化膿しやすくなってしまいます。もちろん、サイズがキツすぎる靴は足にはよくありませんが、緩すぎても足が滑ってしまい、摩擦を起こしてまめが出来てしまうことも少なくありません。まめを予防するには自分の足のサイズにあった靴を選ぶことが大事になってきます。
胼胝(タコ)とは?
足の外来で「足の裏にタコができて痛いのでとって下さい」とよく頼まれます。
そして「タコを取っても痛い」「タコを取ってもらったのに、またすぐに出来た」という不満もよく耳にします。でも、これ実はよくある誤解でタコが痛みの原因ではないんです。
足にタコが出来ると、その部位に痛みがあるのでどうしても「タコ=痛いもの」だと思いがちですよね。タコ自体は皮膚に強い力が加わることで出来る皮膚の障害なのですが、「痛み」もタコと同じように皮膚に強い力が加わることが直接の原因なんです。
この原因である「強い力」を取り除かなければ、タコをとってもすぐに再発してしまい、痛みもなくなりません。タコが出来てしまったら、歩き方の改善や、靴のサイズなどを見直してみるとよいかもしれません。
爪が黒くなって痛い!爪下血腫とは?
みなさんは、爪が黒くなってとても痛い経験をした事がないでしょうか?いわゆる「黒爪(くろづめ)」と呼ばれる障害ですが、これは医学的には爪下血腫という障害です。
爪下血腫は、靴の甲革で爪が圧迫されてることによって爪の内側の皮膚が出血してしまい、爪と皮膚の間に血液が溜まっている状態です。こうなると血液の逃げ場がないので急速に内圧が高まってしまい、激しい痛みをひき起こします。爪に小孔を開けて排液して圧を下げてあげると痛みは嘘のようになくなります。
爪下血腫はサイズがキツイ靴で起こる障害ですが、実は大きいサイズの靴でも起こることがあります。例えば下り坂などで足が前に滑ることで、爪が押されることでも起こってしまうんです。爪下血腫の予防にも、サイズのあった靴をしっかり靴紐を締めて履くことが重要です。
足の皮膚疾患で最も有名?「水虫」の原因と対策
足の皮膚の疾患として最も有名なのは水虫でしょう。水虫は真菌(カビ)の一種である白癬菌の感染症です。白癬菌はケラチンを栄養とするので、ケラチンを豊富に含む表皮角質、爪、毛根に生息します。皮膚の水虫は水疱や糜燗を作るので、とても痒く気づきやすいのですが、爪の水虫は痒くないのでなかなか気づきにくい厄介な障害です。
さらに白癬菌は角質の下に隠れてしまっているので、塗り薬で治ったように見えてもしぶとく生き残っていて再発しやすいので、症状が無くなっても3ヶ月は気長に治療を続ける必要があります。
足に合った靴を目的に合わせて履き分けることが大切
ほかにも最近では、糖尿病による足の障害が話題になっています。
以前に比べると糖尿病についての知識も一般的になり、「血糖が上がって尿に糖が出る」だけの病気と考える人は少なくなってきました。ですが、糖尿病により足が壊死したり、時には切断になったりする事は余り知られていません。
糖尿病は、靴擦れなどの些細な傷でも悪化しやすくなり、潰瘍から感染を生じ、壊死や蜂窩織炎、骨髄炎を起こして、切断に至る事があります。足の皮膚は外界から身を護るとても大事な役割を持っているんです。
靴は、その皮膚を助けて足を護る大切な道具ですが、選び方、使い方を誤ると逆に足に牙をむいて襲いかかってきます。足も靴も日頃は何の気無しに使っていますが、健康な生活を最後まで楽しめるよう、足に合った靴を目的に合わせて履き分けてくださいね