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第22回  靴に関わる12の病気(その1①~⑥)

①爪下血腫

いわゆる黒爪で、爪床と爪の間に出血し痛みます。靴の甲革に爪の先端が当たったり、上から押されて爪床や母床が損傷され、爪が爪床から剥がれ(爪が浮く)、母床が壊死(爪が死ぬ)します。脱落した爪は母床から再生しますが、再生した爪は薄く不整で、完全に元通りにはなりません。

②外反母趾

外反母趾は靴で起こり、靴で痛みます。靴で痛みは改善しますが、残念ながら外反母趾変形が治る靴はありません。外反母趾は先細で外振れの強い(靴の先端が小趾の方に寄っている)靴を履くと母趾が内側から押され、ハイヒールで足が前に滑って母趾が甲革に当たり先端から押されて、母趾が付け根(MTP関節)で小指側に曲がる(外反)して始まります。ですから、母趾が内側と先端から押されない靴、内振れで先端に空間があり(先玉に十分な捨て寸があり)、足が前に滑って捨て寸を駄目にしない靴が外反母趾を防ぎます。外反母趾では第1中足骨が内反しMTP関節が内側に移動して靴に当たり圧迫されて痛みます。最初はE、2E、3Eと言うように幅広の靴を選べば、当たらないので痛みは改善します。でも進行すると4E、Fを越え、市販の靴では当たらないほど幅広な靴がなくなり、後は長さの長い靴で対処するしかありません。同じように最初は痛みが改善しますが、捨て寸の長さが過大となり、甲周り(インステップ)も緩くて足を固定できず足が前に滑って、元の木阿弥になります。当たる部分だけを広げる調節をして痛みを治療しますが、最終的には木型から起こした特殊な靴(靴型装具)が必要になります。

②外反母趾

③強直母趾

母趾MTP関節の変形性関節症で、酷使や加齢によって関節軟骨が摩耗し、関節周囲に骨棘が出来て、背屈時に骨棘同士が衝突して疼痛を起こし、可動域制限を来します。母趾の背屈を制限すれば疼痛の発生が防げるので、シャンク(底金)を延長して靴底を曲がりにくくする、メタタルザール・バー(中足骨棧)やロッカー・ボトムで踏み替えし時の母趾MTP関節の背屈を不要にすることによって靴による治療が可能です。

③強直母趾

④種子骨障害

種子骨は腱の中にあって、腱の滑動を助けます。最大の種子骨は膝蓋骨(膝のお皿)ですが、母趾MTP関節の下の短母指屈筋腱の中にもあって、腱の機能を助けると共に、足底と中足骨骨頭の間にあって緩衝作用も持ちます。種子骨は踏み替えし時に母趾が背屈すると、骨頭に強く押しつけられると同時に、足底に向かって押し出され全体重を一心に支えます。マラソン選手が何回、踏み返しをするか知りませんが、厚労省のお勧めの一日一万歩に従えば、1日5千回は全体重を受ける訳ですから、5,000回x365日x60年=1億回となり、痛み出すのも当然でしょう。コレを防止するには前足部の緩衝性と背屈防止です。ランニング・シューズをみると、軽く可橈性があり、底が薄い物が覆いようです。ランニングに良い靴とランニングをする足に良い靴は別物です。

④種子骨障害

⑤ハンマー・トー?

槌趾(ハンマー・トー)はMTP関節が過背屈、PIP関節が屈曲した状況です。小さすぎる靴に趾尖が押されて縮こまった状態で、始めは靴を脱げば真っ直ぐ元に戻ります。しかし、この状態を続けていると、靴を脱いでも戻らなくなります。未だ、指で戻せば真っ直ぐになりますが、PIP関節の背側は色素沈着し甲革に当たって痛むようになります。最後には指で戻そうとしても戻らず、PIP関節の背側には胼胝が出来て痛みが強くなります。こうなれば、適切なサイズの靴に履き替えても戻らないので手術するしかありません。大きすぎる靴もいけませんが小さすぎる靴ももっといけません。

⑤ハンマー・トー

⑥中足骨骨頭部痛

モルトン病とも呼ばれる中足骨骨頭部痛は、2~4趾の中足骨骨頭部の下に痛みを訴えます。関節炎や腱鞘炎、モルトン偽神経腫に代表される神経障害など多くの病態が考えられますが、それらを除外診断しても残る病態を指しています。開張足や外反母趾、内反小趾などの前足部の変形に基づく荷重障害や、相対的酷使、加齢や羸痩(るいそう)による前足部脂肪褥の菲薄化、関節リウマチに」見られるような脂肪褥の分断等を原因として緩衝性の低下による痛みです。パンプスやハイヒール、サンダルなどの薄底の履物が原因の一つと考えられるので、おしゃれもほどほどにして、石畳の上を闊歩するのは止めましょう。歩くことは健康に良いことですが、前足部の膨らみや母指球、小指球に張りがなくなれば、緩衝性に富んだ靴底の靴を履きましょう。