外反母趾にならないためには、先のとがったハイヒールを長時間履かない事でした。でも、気がついたら外反母趾になっていたら、どんな靴を選んだら良いでしょう。外反母趾が進むと母趾の付け根の内側(バニオン)だけでなく、他の趾の付け根の裏側に胼胝ができて痛くなりきます。皮膚の角質が厚く硬くなったバニオンも胼胝も押すと痛いので、「痛いから取って下さい」と言って多くの患者さんが来院します。しかし、胼胝も痛いのも圧が高くなったのが原因ですから、結果である胼胝を取っても痛みは無くなりません。ですから、外反母趾なったらバニオンや足裏の胼胝の圧を下げる靴が必要です。
足裏の痛みは、靴を履かなくても、いや靴を履かない方が痛いので困ります。台所の硬い床の上でお炊事をするだけで痛い人には、スポンジやムートンの軟らかいサンダルを履いたり、毛足の長いジャギィーの部分敷きを流しの前に敷いたりするだけで解決します。でも困るのはちょっとおしゃれなパンプスやハイヒールで外を歩く時です。コンフォートシューズやスニーカーならなんとかなっても、パンプスの薄い硬い靴底は踏み返しの度に趾の付け根の裏にあったって痛みます。歩道の凸凹、段差、階段の縁など痛い物だらけです。 圧を減らすためには、力を分散すれば良いのですが、踏み返しの時には踵は地面から離れ、趾は背屈して逃げてしまうので、全体重が趾の付け根の裏という狭い面積に集中し、分担する相手がいません。従って、その狭い場所にクッションを敷いて逃げるしか無いのですが、パンプスには構造や製法からここにクッションを敷くのは結構難しい課題です。厚底スタイルのハイヒールだってあるのですから、底を厚くして表底と中底の距離を稼げば良いのですが、フォーマルなパンプスのイメージに合わないのか中々買って貰えません。表底にロールを付けたり、ロッカーボトムを利用して、パンプスの夢を壊さないで外反母趾の人にも足裏が痛まない靴を開発中ですが以外と難問だらけです。
今すぐこれとは言えないので、足の痛い外反母趾の人は、趾の付け根の裏に当たる部分が軟らかく、靴底のカーブが指の曲がる部位に一致し、滑りにくい中底で、できればストラップの滑り止めのある靴を選んで下さい。 一方、バニオンの痛みは靴に当たって起こるので、幅広の靴を選べば良いのですが、外反母趾になると正常より10mm位幅が広がるので、幅だけ10mm広く、他が正常の人の足形と同じ靴など、実際には売っていません。
JIS規格では幅は2mmずつ増えるので、Eの人が4Eを選んでも(10mm-2 mm X3=)4mm足りません。でも靴の長さが1ステップ(5mm)長くなると、表示の幅は同じでも実寸の幅は1.2mmずつ広がるので、3ステップ長いのを選べば当たりません。23Eの外反母趾の人は24.5EEEEの靴を買う事になりますが、24EEEの靴でも少し痛いのを我慢していれば、バニオンの所が膨らんできて当たらなくなります。だから、バニオンの出っ張った外反母趾人が正常の人のJIS規格の靴の中から靴が選べるのです。でも、外反母趾でなくても売れ筋の靴が合わない人が、外反母趾なったら大変で、靴難民の仲間入りです。くれぐれも外反母趾にならないように靴生活に気をつけましょう。
1) 母趾と小趾の付け根の出っ張りから中枢に少し外れた部位で足囲(ボールガース)を測りましょう。
2) 測った足囲、足長から2ステップずつ上のサイズの靴を選びます(23Eなら24EEE)。
3) この時、バニオンに当たる部位の革が柔らかく伸びやすく、その部位の内外に縫い目や切り返しが無いデザインで、捨て寸が少なく、インステップや踵を絞ったスタイルの靴を選びましょう。
4) この靴の中から、靴の種類、デザイン、色、ブランド、価格を考えて、靴が合えば買うと決心が付けば、試し履きをします。言い換えると、試し履きをしてからパンプスでなくハイヒールを、は止めましょう。
5) バニオンが痛いのは取り敢えず我慢して履き、踵がすっぽ抜けないか、足が前後にズレないか、紐靴ならしっかり締められるか確かめます。数分は歩き回って確認しましょう。
6) 此で良かったら、お金を払って買います。駄目なら、何が駄目かをハッキリ伝えて、探し直します。
7) 買ったら、バニオン(とバニオネット)に口紅(や印肉、スタンプインク)を塗ってから靴を履き、内張に印を付けます。球環鋏を印に当てて出っ張らし、履いてみては繰り返します。
慣れると痛くなくなるけど、その頃には靴が古くなってと言う人には最適です。靴の柔軟剤を吹きかけて履くのも良いでしょう。
こんな手間暇を掛けなくても、靴の方でバニオンに併せて膨らんでくれて痛くない靴を開発した事がありますが、残念ながら品切れなので、面倒でも手間暇掛けて合いそうな靴探しバニオンに合わせて調節して下さい。